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東京の雪
東京の冬は、北海道の冬と違う気がする。
胸の奥まで冷える。
大和はゆっくりと歩き、
美咲の眠る墓地へ向かった。
今日が命日だ。
毎年この日だけは、必ず東京に来る。
どれだけ時間が経っても、この習慣だけは変わらない。
花を供え、手を合わせる。
冷たい石に触れた瞬間、
胸の奥に積もった15年分の静けさが揺れた。
「……今年も来たよ」
声に出すと、雪がひとつ肩に落ちた。
帰るだけのつもりだった。
東京に知り合いはもうほとんどいない。
会う予定もない。
ただ、ポケットのスマホが、
あの“消えたいいね”の感触をまだ残していた。
——及川さん、だったのか。
——いや、違うのかもしれない。
分からないまま、
胸の奥だけが静かにざわついていた。
そのざわつきに押されるように、
大和の足は別の方向へ向かっていった。




