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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第57章

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踏み出す一歩

結衣からの「ゆっくり休んでください」という優しい言葉を何度も読み返しながら、

葵は胸の奥のざわつきがどうしても消えないことに気づいていた。


(……このままじゃ、落ち着かない)


聞かない方がいい。

踏み込む理由なんてない。

ただの客なのに。

そう思っていたはずなのに、

心はもう言い訳を探すのをやめていた。


スマホを握りしめ、

葵は深呼吸をひとつ。


(ちゃんと伝えた方がいい……よね)


指が震える。

でも、逃げたくなかった。



「実は、店長さんと以前一緒に働いてまして。

偶然インスタでお店を見つけて、

社員旅行でも伺って……

なんだか懐かしくなっちゃって。

昨日いらっしゃらなかったので、

つい気になってしまって……すみません」



送信ボタンを押した瞬間、

胸がぎゅっと締めつけられる。


(……言っちゃった)


でも、どこかで少しだけ、

肩の力が抜けた気がした。

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