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心の震え
しばらくして、
スマホが小さく震えた。
画面には結衣からのメッセージ。
「無理に気にしなくて大丈夫ですからね。
ゆっくり休んでください」
(……優しい)
その一言に、
胸の奥がふっと温かくなる。
気遣われることに慣れていない自分が、
少しだけ救われた気がした。
でも同時に、
その優しさが胸のざわつきを
さらに際立たせる。
(気にしないなんて……できないよ)
大和のことを思い出すたび、
胸の奥が痛む。
忘れたはずの感情が、
雪のように静かに積もっていく。
葵はゆっくりと返信欄を開いた。
でも、言葉が浮かばない。
「大丈夫です」
「ありがとうございます」
そんな当たり障りのない言葉しか出てこない。
(……どうしてこんなに揺れるんだろう)
自分でも分からない。
ただ、胸の奥のざわつきだけが
静かに、確かに広がっていく。
雪の夜。
葵の中になんとも言えない感情が湧き出していた。




