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優しいぼかし
葵からのメッセージを見た瞬間、
結衣の指が止まった。
「昨日……店長さん、いらっしゃらなかったんですか?」
(……店長さん?)
一瞬だけ考えて、
すぐに気づく。
(あ……大和さんのことだ)
葵は知らない。
高田が“店長”ではなく、
北海道全体を見ているエリアマネージャーだということも。
そして——
葵が“大和の忘れられない人”だということも。
胸の奥がきゅっと痛む。
軽く答えられる話じゃない。
でも、嘘もつけない。
(どう伝えれば……)
結衣は深く息を吸い、
慎重に文字を打ち始めた。
「昨日は……高田さん、
少し大事な用事があってお休みだったんです。
お店に出られなくて……すみません」
“お墓参り”とは言わない。
でも、ただの私用ではない気配が滲む。
送信したあと、
結衣は胸の奥に残るざわつきを
そっと押さえた。
(……気づかれませんように)




