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詰まる距離①
結衣は、葵からの
「お気遣いありがとうございます」
という丁寧な返信を見て、
胸の奥がふわっと温かくなった。
(もっと話したい……でも押しすぎたらダメ)
店の前で見た葵の横顔が思い出される。
寒さで頬を赤くして、
どこか迷っているような、
泣き出しそうな、そんな表情。
あのとき声をかけられなかったことが、
ずっと胸に残っていた。
だからこそ、
今こうして繋がれたことが嬉しくてたまらない。
でも、距離を詰めすぎたらきっと逃げられてしまう。
その怖さが、胸の奥で静かに疼く。
(自然に……自然に話せばいいんだよね)
結衣は深呼吸して、
スマホを両手で包み込むように持ち直した。
慎重に、でも気持ちを込めて文字を打つ。
「社員旅行ですよね?
どこから来られたんですか?」
送信ボタンを押したあと、
胸が少しだけ高鳴る。
(これくらいなら、重くないよね)
静かな休憩室で、
結衣はそっと画面を見つめ続けた。




