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どこかで見た記憶
夜の宴会は、幹事が予約したという地元の人気店。
店名を見ても、特に何も思わない。
居酒屋「灯」
ただ、それだけ。
でも、店に入った瞬間、
葵は足を止めた。
(……あれ?)
木の匂い。
灯りの色。
カウンターの丸み。
湯気の立ち方。
店内のざわめき。
どこかで見たことがある。
でも思い出せない。
同僚たちが席に着き、料理が運ばれ、笑い声が弾む。
その中で、葵はふと店内を見渡してしまう。
何かを探しているわけじゃない。
でも、探してしまう。
(……いない)
探している姿はどこにもない。
(……え?私…誰を探しているの??)
ただ、胸が少し痛い。
理由はまだ分からない。




