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ぐるぐる迷う
葵は、仕事から帰ってきたあと、
玄関でしばらく動けなかった。
(今日も……しんどかった)
俊介の優しさは、
今の葵には重すぎる。
「家族になりたい」
「葵には俺しかいない」
その言葉が、
胸の奥でずっと響いている。
(子どもなんて……無理だよ)
自分の身体のことも、
心のことも、
誰より自分が分かっている。
そんなとき、
ふと大和の笑顔が浮かんだ。
(なんで……今、思い出すの)
分からない。
でも、思い出すだけで
胸の奥が少しだけ軽くなる。
その軽さが、
今の葵には救いだった。




