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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第44章

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逼迫

葵の様子が変だと気づいたのは、

ここ数日のことだった。



笑うけれど、目が笑っていない。

返事はするけれど、どこか遠い。

呼んでも、心だけが返ってこない。



(なんで……どうしてだよ)



胸の奥がざわつく。

葵は優しい。

優しいからこそ、沈んでいくときは声を上げない。



俊介は分かっていた。

気づいていた。

でも——



(離れないでほしい)



その気持ちが、

すべての判断を曇らせていく。



「葵、今日帰ったら話そう。

 これからのこと、ちゃんと考えたいんだ」



葵の肩がわずかに揺れた。

その反応が、俊介の胸を締めつける。



(嫌なのか……?

 俺と未来の話をするのが……?)



焦りが喉の奥で膨らんでいく。



葵の沈みを止めたい。

でも、それ以上に——

繋ぎ止めたい。



その欲が、静かに膨らんでいった。

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