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灯りの残り香
閉店後の居酒屋「灯」は、
さっきまでの喧騒が嘘みたいに静かだった。
カウンターに残る湯気の匂い。
照明の温かい色。
全部が、
大和の人生の“続き”を照らしている。
でも今日は、
その灯りが少しだけ胸に沁みた。
結衣に話したあと、
心の奥にしまっていた箱が
勝手に開いてしまったような感覚がある。
(俺……何を期待してるんだろう)
自分でも分からない。
ただ、胸の奥がざわついていた。
「大和さん、帰らないんですか?」
片付けを終えた結衣が、
そっと声をかけてきた。
「……もう少しだけ」
灯りの下にいると、
胸の奥の揺れが少しだけ落ち着く気がした。




