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結衣の言葉
結衣はしばらく黙っていた。
そして、ゆっくり口を開いた。
「大和さん」
「うん」
「その人……
大和さんの人生にとって、
“忘れちゃいけない人”なんですね」
大和は息を呑んだ。
「忘れられないんじゃなくて、
忘れちゃいけない人。
そういう人って……
人生に一人だけですよ」
その言葉が、
胸の奥に深く落ちていった。
結衣は続ける。
「大和さんが誰を想ってても、
私は……大和さんの味方です」
その優しさに、
大和は言葉を失った。
(忘れちゃいけない人……
俺にとっての“及川さん”は……)
胸の奥が静かに揺れ続けていた。




