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15年前の東京
「……昔さ」
大和はゆっくり口を開いた。
「東京にいた頃、
ストーカーに悩んでる女の子がいて」
結衣は静かに頷く。
「強い子だったよ。
でも……本当は弱くて。
守ってやらなきゃって思った」
そのときの葵の姿が、
ふっと脳裏に浮かぶ。
「でも俺には……
その頃、奥さんがいた」
美咲の笑顔がよみがえる。
優しくて、明るくて、
病気に負けたくないって最後まで笑ってた。
「美咲が……亡くなって。
東京にいる意味がなくなって、
北海道に戻った」
結衣は何も言わない。
ただ、そばにいる。




