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泣きたいのに泣けない
翌朝。
俊介はいつになく機嫌が良かった。
「葵、今日帰ったら話そうね。
これからのこと、ちゃんと考えたいから」
“これからのこと”
その言葉が、葵の胸を締めつける。
(子ども……家族……)
俊介の望む未来に、
自分がいる姿がどうしても想像できない。
(私……壊れちゃう)
声に出せない。
言ったら、もっと不安にさせてしまう。
もっと縛ってしまう。
だから黙るしかなかった。
俊介が出かけたあと、
葵はソファに座り込んだ。
(どうしたらいいの……)
涙が出るほど苦しいのに、
泣くことすらできなかった。




