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沈む身体
俊介が「家族になりたい」と言った夜から、
葵の胸の奥はずっと重かった。
(子ども……)
考えただけで、胃がきゅっと縮む。
自分の身体のことは、誰よりも自分が分かっている。
生理は不安定で、ストレスがかかるとすぐ止まる。
心も身体も、そんな余裕はない。
(私なんかが……母親になれるわけない)
そう思うほど、息が浅くなる。
俊介は優しい。
優しいけれど、最近はその優しさが重い。
「葵には俺しかいないんだから」
「家族が増えたら、もっと安心できるよ」
その言葉が、
葵の胸にゆっくり沈んでいく。
(逃げられない……)
そう思った瞬間、
視界が少しだけ揺れた。




