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もどかしさ
夜の営業が始まる前、
大和はもう一度スマホを見た。
投稿したリールには、
まだほとんど反応がない。
(そりゃそうだよな)
店の紹介でも料理でもない。
ただの自分の声。
でも、どこかで期待している自分がいた。
(……見てくれたら、いいな)
誰が、とは言わない。
言えない。
結衣が暖簾を出しながら言った。
「大和さん、今日の声……
なんか、誰かに届いてほしいみたいでした」
その言葉に、
大和の胸が静かに揺れた。
(届くわけないだろ)
そう思うのに、
心のどこかで、
“届いてほしい誰か”を思い浮かべてしまう。
及川さん。
その名前を胸の奥に沈めたまま、
大和は店の灯りをつけた。




