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鎖
夜。
俊介は葵の隣に座り、
そっと手を握った。
「葵……俺たち、もっと“家族”になれたらいいなって思ってる」
声は優しい。
優しすぎるほどに。
葵は少し驚いた顔をした。
「家族……?」
俊介は微笑む。
その笑顔の奥に、焦りが隠れていることに葵は気づかない。
「うん。葵には俺しかいないし……
俺も、葵だけでいい。
だから……もっと強い絆があったら、安心できると思うんだ」
葵の胸がざわついた。
理由は分からない。
でも、どこか息がしづらくなる。
俊介は続ける。
「子どもがいたら……きっと、もっと家族になれるよね」
その言葉は、
優しいのに、逃げ場がなかった。
葵は笑ってごまかした。
でも胸の奥では、
何かが静かに沈んでいく音がした。
俊介は、葵の手を強く握った。
「葵……俺たち、ずっと一緒だよね」
その声は、
愛の形をしているのに、
どこか鎖のようだった。




