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固執
翌日。
俊介は仕事中もずっと考えていた。
(どうすれば……葵は俺だけを見てくれるんだろう)
結婚では足りない。
指輪でも足りない。
優しさでも足りない。
(じゃあ……何なら足りる?)
ふと、葵の過去が頭をよぎる。
葵の母はもういない。
親戚もほとんどいない。
“家族”と呼べる存在は、俊介だけ。
その事実が、俊介の胸に静かに落ちた。
(家族が増えたら……葵は離れられなくなる)
その考えは、最初は小さなつぶやきだった。
でも、繰り返すほどに形を持ち始める。
(子どもがいたら……絆はもっと強くなる)
その瞬間、俊介の胸の奥で何かがカチリと音を立てた。
“守りたい”という気持ちが、
“繋ぎ止めたい”という執着に変わっていく。




