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乖離
俊介は、葵が寝静まったあと、
暗いリビングでひとり座っていた。
(結婚したのに……どうしてだろう)
葵は優しい。
家事もしてくれるし、笑ってくれる。
でも、その笑顔の奥に“自分じゃない何か”がある気がしてならない。
(俺だけを見てくれればいいのに)
そう思うほど、胸の奥がざわつく。
葵がふと遠くを見るような目をすると、
俊介の心臓はきゅっと縮む。
(結婚しても……足りないのか)
その考えが頭から離れなかった。
葵の心は、どこか別の場所にある。
それが怖くて、たまらなかった。




