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無意識に動く指
インスタを開いた瞬間、
大和の投稿が目に飛び込んできた。
居酒屋「灯」のカウンター。
湯気の立つ料理。
優しい照明。
そして——
大和の落ち着いた声。
「今日も一日、お疲れさまです」
その一言で、
葵の胸の奥がふっと緩んだ。
気づいたら、
親指が画面をタップしていた。
「いいね」
(……っ!)
心臓が跳ねる。
すぐに取り消す。
指が震えていた。
(足跡が残ったら……俊介に気づかれる)
怖さで手が冷たくなる。
でも、胸の奥はほんの少しだけ温かかった。
(……見ちゃいけないのに)
涙がにじむ。
救われたのに、また沈んでいく。




