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気になる人
夜の営業が始まる。
常連客の笑い声、料理の香り、温かい照明。
いつもなら心地よいはずの空気が、
今日はどこか遠く感じた。
「大和さん、注文入りましたー」
結衣が声をかける。
その声に、ほんの少しだけ心が戻る。
(……なんでこんなに気になるんだ)
自分でも理由が分からない。
ただ、胸の奥がずっとざわついている。
料理を運びながら、
ふとスマホのことを思い出す。
(及川さん、今どこで何してるんだろ)
その考えが浮かんだ瞬間、
大和は自分に驚いた。
(いや、違うだろ。なんで俺が……)
頭を振っても、
その名前だけが静かに残り続けた。




