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どこかに向かう心
昼の仕込み。
包丁の音が一定のリズムで響く。
大和は手を動かしながら、
頭のどこかが別の場所にいた。
(……及川さん)
名前を思い出すたび、胸がざわつく。
いつかの“いいね”の通知は消えている。
証拠なんて何も残っていない。
それでも、確かに見た。
あの名前を。
「大和さん、今日ぼーっとしてますよ」
結衣の声で我に返る。
「あ、悪い。寝不足でさ」
笑ってごまかす。
でも結衣は、じっと大和の横顔を見ていた。
(……気づいてるな)
そう思うと、余計に胸が落ち着かなくなる。




