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偏愛
夜。
俊介は葵の隣に座り、
そっと手を握った。
「葵……俺、ちゃんと向き合いたいんだ」
声は震えていた。
不安を隠しきれない。
「最近の葵、なんか遠い。
俺、怖いんだよ……」
葵は何も言えなかった。
俊介の手は温かいのに、
その温度がどこか重かった。
(私がちゃんとしてれば……)
葵の沈黙が、俊介の不安をさらに煽る。
「ねぇ、俺のこと……嫌いになった?」
その言葉は、
優しさの皮をかぶった刃のようだった。
葵は首を振る。
でも俊介は、信じきれない。
(俺以外の何かに、葵が心を向けてる)
その確信が、
俊介の胸の奥で静かに膨らんでいく。
守りたい。
離れたくない。
失いたくない。
その気持ちが、
少しずつ、確実に歪んでいく。




