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詮索
夕方。
葵が洗濯物を畳んでいるとき、
ふと微笑んだ。
ほんの一瞬。
気づかないほどの小さな笑み。
俊介は、その一瞬を見逃さなかった。
(今、何を思い出した?)
胸の奥がざわつく。
喉の奥が熱くなる。
「葵、今笑ってたよね」
「え……? 別に」
その“別に”が、俊介の心をざらつかせた。
(俺じゃない何かを見て、笑ったんじゃないか)
その考えが頭から離れない。
葵がスマホを触らなくなったのも、
逆に不安だった。
(隠れて見てるんじゃないか)
そう思うほど、
葵の行動一つひとつが気になってしまう。
「葵、最近……俺のこと避けてない?」
その言葉は、
優しさの形をしているのに、
どこか縋るようで、
どこか怯えていた。




