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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第35章

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隠しごと

夕方。

俊介が買い物に出た。

玄関の扉が閉まる音を聞いた瞬間、

葵の心臓が跳ねた。



(今なら……)



スマホを手に取る。

画面の明かりが、暗い部屋に小さく灯る。



インスタを開く指が震えた。



(見ちゃだめ……でも)



“だめ”と“見たい”が胸の中でぶつかる。

そのたびに、心がきしむ。



タイムラインをスクロールすると、

ふいに大和の投稿が流れてきた。



居酒屋「(あかり)」のカウンター。

湯気の立つ料理。

柔らかい照明。

そして——

大和の、あの穏やかな声。



「今日も一日、お疲れさまです」



その一言で、

葵の胸の奥がふっと緩んだ。



(……あったかい)



涙がにじんだ。

理由は分からない。

ただ、救われたような気がした。

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