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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 柚原 澄香


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影が消えた夜②

男は答えない。

ただ、じりじりと距離を詰めてくる。


その瞬間、背後から声がした。


「警察です。動かないでください」


パトカーの赤い光が、夜の道を照らす。

通報していたのは大和だった。


警察官が男の腕をつかむと、

男は抵抗もせず連れて行かれた。

その間も、葵だけを見つめ続けていた。


震える手で、大和の袖をつかむ。


「……怖かった……」


大和はそっと葵の肩に手を置いた。


「もう大丈夫だ。君は一人じゃない」


その言葉に、葵の膝から力が抜けた。

大和は支えるように抱きとめ、静かに言った。


「よく頑張ったな」


葵はその胸の中で、声を殺して泣いた。

恐怖から解放された安堵と、

大和の温もりに触れたことで溢れた涙だった。


その夜、葵ははっきりと気づいた。


――私は、やっぱりこの人が好きだ。


越えてはいけない線があることも、

その線の向こうにいる彼を求めてしまうことも、

すべて理解したうえで。


それでも、心はもう止められなかった。

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