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意識のしすぎ
居酒屋「灯」。
夜の仕込みがひと段落し、
大和とスタッフ数名でいつものように
リールを撮っていた。
「今日はおすすめの日本酒を紹介します」
笑顔を作る。
声のトーンも、いつも通りのはず。
でも——
画面の向こうに、ふと“及川さん”の姿を想像してしまう。
(……見てるわけないのに)
そう思っても、
昼間の“いいね”の通知が頭から離れなかった。
スマホのレンズを見つめるたび、
胸の奥がざわつく。
「……あれ、もう一回」
撮り直す。
でも、笑顔が固い。
言葉が少し詰まる。
(なんでこんなに意識してんだよ)
自分に呆れながらも、
手の震えは止まらなかった。




