107/284
依存
夜。
葵が帰宅すると、俊介は玄関まで出てきた。
「遅かったな。心配した」
その声は優しいのに、
抱きしめる腕は少しだけ強すぎた。
(……苦しい)
でも葵は言わない。
言えない。
俊介を不安にさせたのは自分だと思っているから。
母の死で揺れた自分。
大和の動画で泣いた自分。
俊介の前で弱さを見せた自分。
(私がしっかりしなきゃ。壊れちゃうのは……私のせいだから)
俊介の腕の中で、
葵は静かに息を殺した。
俊介は気づかない。
自分の“守りたい”が、
葵をゆっくり締めつけていることに。
そして葵も気づかない。
自分の“罪悪感”が、
俊介の狂気を育てていることに。
二人の心は、
まだ壊れてはいない。
でも、確実に危うい場所へと進んでいた。




