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静かに歪む愛
夜。
俊介は眠る葵の横顔をじっと見つめていた。
(俺の妻だ。俺が守る)
その想いは純粋だった。
けれど、胸の奥に広がるのは“守りたい”だけではない。
(離れないでくれよ……葵)
指先が葵の髪に触れる。
その動きは優しいのに、
どこか必死で、どこか怯えていた。
葵が寝返りを打つと、俊介の心臓が跳ねる。
(もし……誰かのことを考えてたら)
その瞬間、胸の奥に黒い影が落ちた。
“確かめたい”
“知りたい”
“逃がしたくない”
そんな言葉が、静かに形を持ち始める。
俊介は気づかないふりをした。
自分の愛が、
少しずつ歪み始めていることに。




