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影が消えた夜①
ストーカーの男が姿を見せなくなって数日。
葵は少し安心していたが、
心の奥の不安は消えなかった。
その夜も、大和は閉店後に葵を駅まで送っていた。
街灯の下を歩くたび、葵は無意識に後ろを振り返る。
「大丈夫。今日は俺がいる」
大和はそう言って、歩幅を合わせた。
駅が近づいたとき――
「……あれ」
大和が小さくつぶやき、
葵の前に立つように位置を変えた。
視線の先には、あの男。
街灯の下で、じっとこちらを見ている。
葵の足が止まる。
全身が冷たくなる。
男はゆっくりと歩き出し、2人に近づいてくる。
「……帰り、つけてきたのか」
大和の声が低くなる。
男は無表情のまま、葵だけを見つめていた。
「及川さん、後ろに下がって」
大和が腕を広げ、葵をかばうように前に立つ。
「何の用だ。彼女に近づくな」




