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プロローグ
人の心には、
誰にも見えない境界線がある。
越えたつもりで越えられなかった線。
守ったつもりで壊してしまった線。
気づかないうちに動いてしまう線。
あの日、ひとつの言葉が
その境界線を静かに揺らした。
すれ違いは、何度も重なる。
再会も、何度か訪れる。
それでも二人の心は、
同じ場所に辿り着けなかった。
積もった時間は、雪のように静かで、
触れれば崩れるほど脆いのに、
消えずに残った想いだけが
薄い灯りのように胸の奥で揺れていた。
そして──
20年後のあの瞬間に、
止まっていた“恋”は静かに動き出す。




