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20年間忘れられなかった人と、もう一度恋をする  作者: 沈丁花
第1章

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居酒屋の灯りの下で

暖簾をくぐった瞬間、

油の匂いと焼き魚の香りが混ざった、

どこか懐かしい空気が葵を包んだ。


「今日から入る及川さんね。よろしく」


カウンター奥から聞こえた声。

白いシャツの袖をまくり、落ち着いた笑顔を浮かべた男——

店長の高田大和。


19歳の葵は、胸がいっぱいだった。

大学に入ったばかりの初めてのアルバイト。

緊張で手が震える。


慣れない注文取りに戸惑い、

グラスを倒しそうになっては謝り、

厨房の声に返事が遅れてしまう。


そのたびに、大和は静かに言った。


「焦らなくていいよ。最初はみんなそうだから」


その優しさが、葵の胸にそっと灯る。

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