表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒しのエルフ  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/127

第2章:誰の許可もない癒し scene1 報告書の一行

王都神殿の裏棟は、静かだった。


祈りの声は届かない。

香も焚かれない。


ここは、祈る場所ではなく、

整理する場所だった。


石壁に囲まれた小部屋で、

下級神官のオルフェンは机に向かっている。


机の上には、報告書の束。

日付ごとに分けられ、

薄い紙がきちんと揃えられている。


彼は羽根ペンを持ち、

淡々と文字を書き連ねていく。


「井戸水異常なし」

「市街南区、負傷者三名。治療済み」

「市場内、口論一件。鎮静化」


どれも、昨日の出来事だ。

だが、そこに感情は含まれない。


事実だけを、

定められた欄に収める。


オルフェンは一度、ペンを止めた。


報告欄の下のほうに、

余白がある。


市井の広場。


彼は小さく息を吐き、

その欄に文字を落とした。


「市井の広場にて、原因不明の回復反応、複数名確認」


それだけだ。


奇跡、という語は使われない。

祝福、という判断も下されない。


原因不明。

回復反応。

複数名。


それらは、分類のための言葉だった。


オルフェンは、内心で首を傾げる。


治療記録はない。

儀式も、神殿関与も確認されていない。


それでも、

「楽になった」と言う者がいる。


だが、彼はそれ以上考えない。


報告書は、考察の場ではない。


ペン先が紙を離れる。

一行が、枠の中に収まる。


出来事は、ここで終わった。


紙束はまとめられ、

上位部署へ送られる。


広場で起きたことは、

すでに“案件”になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ