表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒しのエルフ  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/127

scene3 噂ではなく、分類

配給所から少し離れた通り。人の流れが緩む場所で、二人の市民が足を止めていた。


声は低い。周囲に配慮した、控えめな会話だった。


「……あの人、まだなんだって」


名前は出ない。それでも、どちらも同じ人物を思い浮かべている。


「そう。試練の途中なんでしょうね」


「ええ。焦らない方がいいわ。選ばれる時は、ちゃんと来るもの」


慰めの調子だった。責める響きはない。ましてや嘲笑もない。そこにあるのは、納得と整理だった。


二人はそれ以上言葉を重ねず、それぞれの方向へ歩き出す。会話は、噂として広げるためのものではなかった。ただ、共有された理解を確認しただけだ。


少し離れた場所で、アマリは立ち止まっていた。


直接聞いたわけではない。声も、単語も、耳には届いていない。それでも、空気の向きが変わったことは分かる。


視線が、以前より一瞬遅れて外れる。

声をかけられる頻度が、わずかに減る。

列に並ぶと、前後に小さな間ができる。


誰も彼女を避けているわけではない。挨拶も、形式的なやり取りも、これまで通りだ。ただ、無意識の距離が生まれている。


――まだ、なんだ。


その言葉が、評価として定着している。


癒されていないことは、状態であり、段階であり、説明可能な位置づけだった。そして同時に、人となりを示す指標にもなっていた。


努力不足ではない。罪でもない。

だが、「今の彼女」を語るには十分だった。


排除は、もはや噂ではなかった。

街の中で、静かな分類として機能していた。


癒しは恵みではなく、

人を測るための、分かりやすい印になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ