scene4 夢を持たない子ども
ティエナは、広場の端で一人座っている子どもに声をかけた。
年は、七つか八つ。
服は清潔で、姿勢も崩れていない。
「ねえ」
子どもはすぐに顔を上げる。
呼ばれたことに、驚きも警戒も見せない。
「大きくなったら、何になりたい?」
少しの間も置かず、答えが返ってきた。
「商人です」
声は平坦で、抑揚がない。
「どうして?」
問いを重ねると、子どもは首を傾げる。
考えているというより、適切な項目を探している仕草だった。
「物流は、この街に必要だから」
別の子どもにも聞いてみる。
「記録官です」
「調停補佐が、いいと思います」
理由を問えば、同じ言葉が返ってくる。
「役に立つから」
「不足しないようにするためです」
そこに、憧れはなかった。
楽しそうだという響きもない。
好きだから、という語は一度も使われない。
彼らは未来を語っている。
だが、それは夢ではなかった。
必要性と効率で組み立てられた、役割の一覧表。
最適化された配置先としての将来。
未来は、存在している。
しかしそこには、期待も不安も入り込む余地がない。
ティエナは、言葉を失う。
夢は、目標へと矮小化されていた。
そして目標は、街の都合だけで定義されていた。
その未来には――
子ども自身の「行きたい場所」が、存在していなかった。




