scene2 大人たちの評価
広場の縁で、大人たちが立ち話をしていた。
誰も子どもを叱ってはいない。
誰も心配そうに覗き込んでもいない。
視線は向けられているが、感情は介在していなかった。
一人が、感心したように言う。
「この街の子は、強いですね」
隣の者が頷く。
「ええ。無駄に泣かない。立派です」
別の声が、評価を補足する。
「感情に振り回されないのは、成熟の証でしょう」
「早いうちから、自分で処理できている」
肯定の言葉ばかりが、静かに積み重なる。
誰も「泣かないこと」を疑わない。
むしろ、誇りとして語られていた。
その輪の少し外に、ティエナは立っていた。
反論する言葉は浮かばない。
否定する材料も、ここにはない。
彼女は、無意識に精霊を探す。
風の流れに耳を澄まし、気配を拾おうとする。
――何も、返ってこない。
沈黙は、以前よりも深い。
拒絶ではない。応答そのものが存在しない。
大人たちの会話は続く。
「感情的にならない分、判断も早い」
「将来が楽しみですね」
泣かないことは、弱さではない。
未熟さでもない。
この街では――
感情を表に出さないことこそが、成熟と再定義されていた。
ティエナは、その輪の中にいながら、
言葉も、癒しも、差し出せないまま立ち尽くしていた。




