scene4 安堵 ― 人々が「答え」を得る瞬間
反応は、早かった。
誰かが息を吐く。
それは溜め込んでいたものを手放す音だった。
次に、頷きが生まれる。
一人ではない。
波紋のように、静かに広がっていく。
表情が、わずかに緩む。
笑顔と呼ぶには小さいが、
硬直が解けるには十分だった。
「……そうか」
誰かが、低く呟く。
不安は消えたわけではない。
だが、居場所を与えられた。
沈黙は、意味を持った。
評議員の一人が、前に出る。
声は落ち着いていて、
言葉は整っている。
「精霊が拒んでいない、ということは」
一拍、置く。
「我々は、もう癒しを必要としていない、
そう受け取ってよいのでしょう」
視線が、ティエナに向く。
彼女は、答えない。
否定しない。
だが、肯定もしない。
沈黙は、再び落ちる。
しかし今度の沈黙は、
不安を伴わなかった。
評議員は続ける。
「精霊に頼らずとも、
我々は立てている」
「それは――
この街が、成熟している証だ」
言葉は整理され、
共有され、
意味として固定されていく。
沈黙は、
合格の印になった。
ティエナは、それを止められなかった。
否定すれば、
今得られた安堵を奪う。
説明を重ねれば、
再び沈黙を恐れさせる。
彼女は、
語らないという選択を、
ここでは取れなかった。
こうして、
彼女の一言は、
人々の中で、
確かな「答え」へと変わっていった。




