表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
癒しのエルフ  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/127

第7章:沈黙する街 scene1 整いすぎた交易路

交易都市〈エル=カナ〉へ続く街道は、よく整えられていた。

轍は均され、石畳に欠けはなく、荷馬車は減速する必要もなく門へ向かう。流れは途切れず、滞りもない。そこに焦りはなく、遅延も許容範囲として織り込まれている。


ティエナは、その流れの端に身を置きながら街へ入った。


門前では検問が行われている。

だが、声は低く、手続きは簡潔だ。兵士の動きに無駄はなく、表情も変わらない。警戒している様子はあるが、緊張はない。争いを想定していない態度だった。


通りに入ると、商人たちのやり取りが耳に入る。

価格交渉は行われている。だが、声は荒立たず、語調は一定で、感情の起伏が見えない。


「では、その条件で」


「承知しました」


それだけで話は終わる。

押し問答も、笑い声もない。成立した事実だけが、淡々と次へ流される。


荷を運ぶ者、帳簿を確認する者、倉庫へ指示を出す者。

人は多い。仕事も多い。街は動いている。


それでも、熱がない。


笑顔は向けられる。

だが、それは角度の揃った礼の一部で、喜びの発露ではなかった。声色は誰もが似通っており、驚きも苛立ちも混ざらない。感情は、流通に適さないものとして排除されているようだった。


警備兵は目立たない。

必要がないからだ。争いを仲裁する場面が、想定されていない。問題が起きる前に、起きない形へ整えられている。


街の誇りは、建物でも富でもなかった。


「ここでは、問題が起きません」


そう言われることを、誰もが当然のように受け入れている。

問題がないこと。

それ自体が、完成された状態として維持されている。


ティエナは歩きながら、風に意識を向けた。

流れはある。

だが、引っかかりがない。


整いすぎた交易路は、確かに平穏だった。

同時に、それは――何も芽吹かない土壌でもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ