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scene8 章の締め ― 測れるものと、救えるもの
ヴィクスの表示は、最後まで変わらなかった。
精霊反応値、正常。
波形、安定。
逸脱なし。
学院は成果を得た。
測定条件は整理され、再現性は確認され、報告書は整った文面で提出される。癒しは「成立する現象」として、学術的に位置づけられる。
誰も嘘をついていない。
装置も、研究員も、数値も。
それでも――完全に救われた者はいなかった。
被験者たちは日常に戻る。
軽くはなっている。
だが、歩き出す足取りは、どこか慎重だ。
重さを忘れたのではなく、持ち直しただけの歩き方だった。
ティエナは測定棟を出る前に、一度だけ振り返った。
円筒の内壁に浮かぶ、整いすぎた光。
そこには、迷いも、躊躇も、沈黙も存在しない。
数値は、
嘘をつかなかった。
だが、
それが示したのは、
救いではなかった。
測れるものと、
救えるものは、
同じ形をしていない。




