第6章:学院都市の測定器 scene1 白い都市リュミナス
白い都市リュミナスは、高地の風に削られた石の上に築かれていた。
雲に近い位置にある街は、陽光を受けても眩しさより先に冷たさを感じさせる。白石の建築群は均一な高さで並び、装飾は少なく、角と線だけで構成されている。意匠は美しいが、そこに誇示はなかった。
通りの各所には、精霊感応灯が設置されている。
小さな水晶球が柱の先に据えられ、精霊の反応がある地点では、淡い光を灯す。強くもなく、弱くもない。注意を喚起するためではなく、「記録されている」という事実を示すための光だった。
人々は足早に歩いている。
だが、走らない。
誰もが一定の速度を保ち、互いの進路を乱さない。視線は前方か、目的地の入口に向けられ、立ち止まって空を見上げる者はいない。笑い声も、怒声も少ない。静寂ではないが、感情の音が削られている。
目立つのは神殿ではなかった。
尖塔を持つ研究棟、測定塔、記録保管庫。
精霊に祈る場所より、精霊を測る場所の方が高く、街の輪郭を形作っている。信仰施設は存在するが、街の中心にはいない。端正に、しかし控えめに、学術の建築群の影に収まっていた。
休むことは許されている。
広場には長椅子があり、茶を提供する施設も整っている。
だが、そこに身を預ける人々の表情は、どこか空白だった。疲れていないが、満ちてもいない。身体は整えられているが、心は保留されている。
砂漠領サル=アムでは、止まることが罪だった。
ここリュミナスでは、止まっても何も始まらない。
静かで、冷たい秩序。
正しさが沈殿し、揺らぎが濾過された街。
癒しは拒まれない。
だが、その居場所は、あらかじめ測られている。




