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scene8 章の締め ― 強制できないもの
管理詰所では、
今日も帳面が開かれている。
ガルドは、
そこにいる。
癒されていない。
進捗は、
予定通りだ。
配置も、
変わらない。
採掘場は、
止まらない。
砂漠領〈サル=アム〉は、
何一つ、
変化していない。
それでも、
一つだけ、
残ったものがある。
言葉だ。
「あなたも、
ずっと休んでいません」
それは、
命令ではない。
批判でもない。
ただの、
事実だった。
だからこそ、
消せない。
癒しは、
正しさでは届かない。
制度が正しくても、
論理が整っていても、
そこに、
受け取る意思がなければ、
それは、
ただの侵入になる。
癒しは、
救いである前に、
選択だ。
そして、
選択は、
強制できない。
――第5章・了。




