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scene7 逃がされる癒し
ティエナは、
歩いた。
急がない。
だが、
立ち止まらない。
示された裏道は、
狭く、
影が濃い。
砂の匂いが、
少しだけ薄れる。
誰も、
追ってこない。
それが、
答えだった。
彼女は、
振り返らない。
詰所も、
採掘場も、
見ない。
抵抗する理由は、
ない。
拒まれた癒しは、
そこで終わる。
門の前で、
一度だけ、
立ち止まる。
手を、
小さく上げる。
精霊に、
語りかけるでもなく、
命じるでもなく。
ただ、
通路を作る。
風が、
一度、
外へ流れる。
砂を動かすほどではない。
誰かが気づくほどでもない。
痕跡は、
残らない。
癒しは、
ここに根付かない。
ティエナは、
そのまま、
門を出る。
閉じる音は、
立てられない。
静かに、
彼女は消える。
残ったのは、
変わらない現場と、
拒否したという事実だけだ。
癒しは、
排除された。
だが、
拒まれたという記憶は、
この場所に、
確かに残っていた。




