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scene5 傷ついた管理者
扉が閉まる音は、
小さかった。
それでも、
管理詰所の中には、
はっきりと残った。
ガルドは、
すぐには動かない。
椅子に座ったまま、
進捗表を見つめる。
紙は、
変わっていない。
数字も、
線も、
いつも通りだ。
だが、
視線が定まらない。
列を追おうとして、
途中で外れる。
同じ行を、
何度もなぞる。
理解は、
追いつかない。
ペンを取る。
修正が必要な箇所は、
分かっている。
だが、
指が、
わずかに震えた。
気づいた瞬間、
握り直す。
震えを、
力で押さえ込む。
誰も、
見ていない。
それでも、
隠す。
管理者は、
揺らいではならない。
揺らぎは、
判断の遅れになる。
判断の遅れは、
責任になる。
ガルドは、
深く息を吸う。
だが、
吐く前に、
止まる。
呼吸を、
整えることすら、
癒しに近い。
それを、
許せない。
部屋は、
静かだ。
誰も、
彼を支えない。
誰も、
声をかけない。
癒しを、
拒んだ。
その代償として、
この沈黙を、
引き受ける。
管理詰所は、
止まっている。
だが、
ここで最も孤立しているのは、
ガルド自身だった。




