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scene4 刺さる言葉
ティエナは、
うなずいた。
拒否を、
拒否しない。
手を下ろし、
一歩、
引く。
「分かりました」
それだけ言って、
扉へ向かう。
説得もしない。
抗議もしない。
癒しは、
選ばれなければ、
成立しない。
彼女は、
それを知っている。
取っ手に、
指が触れた。
その瞬間、
立ち止まる。
振り返らないまま、
事実だけを、
落とす。
「……あなたも、
ずっと休んでいません」
声は、
静かだった。
断定でも、
非難でもない。
見えてしまったものを、
言葉にしただけだ。
部屋の空気が、
止まる。
ガルドは、
動かない。
怒鳴らない。
否定しない。
言葉が、
出てこない。
胸の奥に、
触れてはいけない場所がある。
そこに、
正確に、
刃が届いた。
管理者としての仮面が、
剥がれそうになる。
彼は、
それを押し戻す。
視線を落とし、
帳面を見る。
だが、
数字が読めない。
沈黙が、
返事だった。
ティエナは、
それ以上、
何も言わない。
扉を、
静かに閉める。
残されたのは、
癒されなかった身体と、
言葉だけが残した、
痛みだった。
善意は、
時に、
最も深く、
人を傷つける。




