30/127
第5章:癒しを拒む男 scene1 管理詰所の静寂
管理詰所は、
採掘場から少しだけ離れている。
距離は、
騒音を切るためのものだ。
休ませるためではない。
扉を閉めると、
金属音と叫び声は消える。
代わりに、
乾いた空気が残る。
冷房は入っている。
だが弱い。
涼しさは、
作られているだけで、
与えられてはいない。
ガルドは、
机に向かっていた。
帳面を開き、
進捗表を並べる。
数字を追い、
線を引き、
遅れと過剰を切り分ける。
作業は、
正確だ。
手元に迷いはない。
だが、
止まらない。
椅子に座っているのに、
身体は前に出ている。
背は伸びず、
肩は下がらない。
呼吸は浅く、
一定のまま。
ここでは、
誰も急かさない。
命令も、
罵声もない。
それでも、
休息は生まれない。
静かだからこそ、
考えが止まらない。
止めてしまえば、
崩れるものがある。
ガルドは、
帳面から視線を外さない。
外の現場より、
この部屋のほうが、
彼を縛っている。
管理詰所は、
止まっている。
だが、
休んではいなかった。
そして、
ガルドもまた、
止まれないまま、
そこにいた。




