第4章:砂漠領では、休むことが罪 scene1 止まらない採掘場
砂は、鳴いていた。
鉄が岩を削る音、荷車の軋む音、呼吸の荒さが混じり合い、灼熱の採掘場は一つの塊のように震えている。太陽は真上にあり、影は短く、逃げ場はない。空気そのものが重く、肺に入るたび、身体の内側を焼く。
休憩の合図は、確かに鳴った。
乾いた鐘の音が一度、場に落ちる。
だが、誰も止まらない。
誰一人として、工具を置かない。
誰一人として、腰を下ろさない。
音は途切れず、むしろわずかに強まった。鐘が鳴った直後に止まることのほうが、ここでは目立つ。目立つことは、危険だった。
水袋に口をつける者はいる。だがそれは、岩陰に半身を滑り込ませるような動きで、ほんの一瞬だ。喉を潤すというより、乾きを誤魔化すための動作に近い。飲む姿を見られないよう、顔を伏せ、すぐに持ち場へ戻る。
誰も、楽になろうとはしていない。
楽になることは、止まることだからだ。
止まることは、ここでは弱さと同義だった。
弱さは、配置転換を呼ぶ。
配置転換は、評価を下げる。
評価が下がれば、次は砂漠だ。
だから、止まらない。
身体が悲鳴を上げても、足がもつれても、腕が震えても、作業のリズムだけは崩さない。崩せば、自分が自分でなくなる。
灼熱の中で、癒しは存在しなかった。
あるのはただ、続けることだけだ。
休める。
だが、休まない。
それが、砂漠領〈サル=アム〉の常識だった。




