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scene7 語りすぎる男
ラグナの説教は、
日ごとに増えた。
最初は、
流れの話だった。
次に、
正しさの選び方。
やがて、
具体的になる。
「これは、精霊の好む行いだ」
「それは、流れを乱す」
言葉は、
細かく区切られていく。
禁忌が生まれる。
「してはならないこと」
推奨が生まれる。
「こうすれば、軽くなる」
罰が語られる。
「従わぬ者は、
重さを引き受ける」
精霊は、
そこまで語っていない。
だが、
語られない部分は、
すべて埋められていく。
沈黙が、
許されなくなる。
人々は、
書き留め始める。
覚え、
伝え、
守ろうとする。
理解するためではない。
間違えないためだ。
一方、
ティエナは語らない。
癒しが起きても、
理由を示さない。
問いが向けられても、
答えを置かない。
受け取るかどうかは、
相手に委ねる。
それは、
不親切に見える。
だが、
余地が残る。
ラグナは、
語りすぎる。
余白を、
すべて言葉で覆う。
受け取る側は、
考えなくていい。
代わりに、
選ぶこともできない。
精霊の声は、
人の言葉に包囲され、
逃げ場を失っていく。
男は、
声を聞いた。
だが今や、
街が、
彼の声を聞いていた。




