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scene4 人々の安堵
ラグナの言葉が、
一段落すると、
広場に静けさが落ちた。
誰も、すぐには拍手をしない。
代わりに、
いくつもの頷きが、
ゆっくりと連なっていく。
理解した、という合図だった。
前に立っていた男が、
目元を押さえる。
泣いているのではない。
涙が、勝手に滲んだだけだ。
「……そうだったのか」
誰かが、
小さく呟く。
その一言が、
空気を決定づける。
疲れは、
理由のない重さではなかった。
怠惰。
秩序の乱れ。
正しさからの逸脱。
原因が与えられると、
苦しみは整理される。
安堵のため息が、
あちこちで漏れる。
癒されたわけではない。
足取りが軽くなった者も、
肩の痛みが消えた者もいない。
それでも、
人々の顔は、
少し楽になっている。
納得できたからだ。
自分の疲れが、
理解できる物語の中に
収まった。
それは、
一時的な救いだった。
だが、
この街では、
十分な救いでもあった。
理由のない現象よりも、
理由のある苦しみの方が、
人は耐えやすい。
広場には、
見えない癒しが広がっていた。
それは、
身体ではなく、
意味が軽くなる感覚だった。




