scene2 ラグナ=セルヴァの登場
の広場は、
いつもより少しだけ騒がしかった。
屋台の間に、
木箱を重ねただけの台がある。
誰かが登るために
用意されたものではない。
だが、そこに立った男は、
最初から場所を選んでいた。
「聞いてくれ」
声は、よく通った。
大きくはない。
だが、迷いがない。
人々が振り向く。
男は名乗った。
「ラグナ=セルヴァだ」
躊躇はなかった。
名を出すことに、
一切の含みがない。
彼は、
問いかけない。
「私は、精霊の声を聞いた」
断言だった。
説明は続くが、
前置きはない。
「精霊は言った。
人は疲れすぎている、と」
主語は、常に明確だ。
誰が語り、
誰が決めたのかが、
最初から固定されている。
「かつて、人は違った。
今は、流れを見失っている。
これから、選ばなければならない」
時制も、揺れない。
過去、現在、未来。
すべてが、一本の線で結ばれる。
曖昧な言い回しは、
一つもない。
「精霊は、迷わない」
彼はそう言い切った。
その言葉に、
誰かが息を吐く。
理解したわけではない。
だが、
迷わなくていいと
告げられた。
それだけで、
十分だった。
この街には、
断定を待つ空気があった。
ラグナの声は、
そこにぴたりと嵌まる。
正しいかどうかは、
まだ誰も知らない。
だが、
はっきりと言い切られること自体が、
人々にとっての救いになっていた。




