scene6 拒否
使節の言葉が終わると、
広場に短い沈黙が落ちた。
誰かが答えるのを、
前提とした間だった。
ティエナは、
すぐに首を振らない。
考え込む素振りも見せない。
ただ、静かに言った。
「私は、ここにいるだけです」
それは、拒絶だった。
だが、反論ではない。
使節は一瞬、言葉を探す。
「登録や監督は、
妨げるためのものではありません」
説得の声だった。
「事故や誤解を防ぐためです。
責任の所在を――」
ティエナは、話を遮らない。
だが、頷きもしない。
「必要だと思う方が、
そうすればいいと思います」
政治的な言葉に、踏み込まない。
是非を論じない。
制度の欠陥も指摘しない。
ただ、参加しない。
「私は、ここで、
風が通るかを見ているだけです」
使節は、困惑を隠せない。
反抗ではない。
挑戦でもない。
だが、枠に入らない。
敵対してくれたほうが、
対処は簡単だった。
「……それでは」
使節は言葉を選ぶ。
「神殿としては、
放置はできません」
ティエナは答えない。
否定も、肯定もしない。
ただ、その場に立ち続ける。
広場の人々は、
会話に耳を傾けていない。
用事を続け、
行き交う。
この場所は、
誰の許可もいらない。
それが、
最も不安な事実だった。




