シーン4:ラグナの内面 ― 声がないと知っている者
る者
目的
ラグナを狂信者ではなく、自覚的な語り手として描く。
内面整理
精霊は、もう応答していない
自分の言葉は、世界に届いていない
それでも、語らなければならない
核心的独白(方向性)
「私は、預言者ではない」
「だが、黙る役も与えられていない」 小説化
以下は シーン4:ラグナの内面 ― 声がないと知っている者 の小説化です。
ラグナを「信じている者」ではなく、「成立していないと理解したうえで語っている者」として描いています。
シーン4:ラグナの内面 ― 声がないと知っている者
ラグナは、語りながら知っていた。
精霊は、もう応答していない。
かつては、言葉の節目で風が走り、
間合いに微かな光が宿った。
今はない。
どれほど正しい構文で語ろうと、
どれほど古い預言書の言い回しをなぞろうと、
世界は、何も返さない。
沈黙ですらない。
ただ、無反応。
彼の言葉は、世界に届いていなかった。
それでも、口は止まらなかった。
止めれば、何が起きるかを、
彼はもう知っている。
群衆の目。
語りが途切れた瞬間に生じる、あの不安の跳ね。
誰も「信じている」わけではない。
だが、誰も「聞くのをやめられない」。
ラグナは、自分が何者かを理解していた。
(私は、預言者ではない)
精霊の声を受け取っているわけではない。
未来を見ているわけでもない。
(ただ、語っているだけだ)
意味が保証されない言葉を。
裏付けのない文を。
終わりを示さない語りを。
だが同時に、分かっている。
(私は、黙る役も与えられていない)
沈黙は、今や最も危険な状態だ。
誰かが答えを出さねばならないとき、
誰もが責任を引き受けたくないとき、
空白は、暴力になる。
だから、彼は立っている。
信仰のためではない。
真実のためでもない。
ただ、
この場が崩れないために。
彼の語りは、救いではなかった。
導きでもなかった。
世界が自分で答えを選び始めるまで、
その瞬間を、少しでも遅らせるための――
仮の声。
ラグナは知っている。
自分の言葉は、正しくない。
だが、間違っているとも言えない。
それが、今この世界で
最も危うく、
最も必要とされている位置だった。
彼は再び、声を張った。
精霊に向けてではない。
世界に向けてでもない。
ただ、
沈黙が訪れないように。
それだけの理由で、
ラグナは今日も語っていた。




