scene4 探されるエルフ
その日の午後、
市井の広場に、見慣れない人間が現れた。
神殿の印章を付けた外套。
だが、威圧はしない。
彼らは、歩き、止まり、尋ねる。
「昨日、この辺りで、
回復したと話している者はいませんか」
最初は、誰も答えない。
広場は、用事の場所だ。
関わる理由がない。
靴職人のハルドは、
作業台の前で手を止めた。
「回復、ってほどじゃない」
慎重な言い方だった。
「ただ、足が軽くなっただけだ」
役人が、すぐに書き留める。
「誰が行った?」
ハルドは首を振る。
「知らん。
名乗らなかった」
それ以上は、出てこない。
洗濯女のレナも、
少し離れた場所で呼び止められた。
「エルフがいた?」
「いたわよ」
即答だった。
「でも、ああいうのじゃない」
「ああいう、とは?」
レナは一瞬、言葉に詰まる。
「説教もしない。
選ばれた、とか言わない。
儀式も、光もない」
役人が確認する。
「所属は?」
「知らない」
「神殿ではない?」
「違う」
「学院か、組合か」
「違う」
やり取りは短い。
共通しているのは、
情報が欠けていることだった。
名がない。
所属がない。
儀式がない。
あるのは、
「いた」という事実だけ。
役人たちは顔を見合わせる。
特異ではある。
だが、それ以上に――掴めない。
追跡も、管理も、
前提が揃わない。
「……広場に、ずっと?」
ハルドは首を振る。
「気づいたら、いなかった」
それで話は終わる。
彼女は、現れ、
何かを起こし、
名を残さず去った。
その性質こそが、
管理側にとっての問題だった。




